掌(たなごころ)に宿す供養の心――
じりじりと北の都を包む夏、迎え火から送り火までの全ての行事を、今年も無事に終えることができました。
例年に比べて札幌の夏は一段と熱を帯びた年でした。
8月13日夕刻、観音霊堂前にて諸霊位供養をお勤め、夕闇が迫る頃には〝迎え火の苧殻(おがら)〟が焚き上げられ、境内には参拝の皆さまが静かに集われました。焚き上げる苧殻の炎と点灯された竹灯籠のあかりは、ひとつひとつがご先祖様を迎える道しるべとなり、同時にこの世に生きる私たちの祈りの形でもありました。
コロナ以後も極力人の集まりを避けられておられた方々も、やっとご参拝を再開されご様子。盆行事期間中は檀信徒皆様のご家族連れでの納骨堂のお参り、送り盆の16日には施餓鬼供養が順次営まれ、焼香の煙が絶えることなく立ち上りました。そして法要終了後、札幌大仏文殊殿内に成作された全ての灯籠が集まり、檀信徒作成灯籠と共に一般参加者作成竹灯籠にも明りが灯され、送り火前のひと時般若心経をお唱え申し上げました。苧殻を参拝者自らの手で焚き上げる送り盆の〝送り火〟は、穏やかなけむりとなり静かに空へと昇っていきました。
これらの行事を通して、仏様からのお礼の思いが、参拝者お一人お一人の心に届いたことと存じます。炎と灯りを通して伝わるのは、感謝と安らぎ、そして再びの再会を約するやさしい誓いです。竹灯籠を作られた方々には、仏様よりその誠意が確かに届いていることでしょう。
また住職より御礼を申し上げます。酷暑の中にもかかわらず、供養を勤めさせていただく喜びを胸に、迎え火から送り火まで足を運んでくださった方々、竹灯籠作りにご参加いただいた方々、準備や後片付けを担ってくださった方々、全ての方の真心が今年のお盆行事を支えてくださいました。行事の一つひとつが滞りなく勤められたのは、そのお力添えあってのことです。
こうして今年も、供養の心を掌に抱きながら、北の都に祈りの夏を刻むことができました。炎と灯りの記憶は、来年もまた私たちをこの境内へと導くことでしょう。
当山の「迎え火行事」も、移転前の山の手に本堂があった時代から受け継がれてきたご供養であり、はや40年ほどの歳月を重ねてまいりました。これからも、時代の移ろいの中でその灯を絶やすことなく、祈りと供養の心を次代へとつないでまいります。
今後とも、変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げる次第です。
ご参加、そしてご協力、誠にありがとうございました。
合 掌
お盆行事写真集
竹灯籠展示の役員さん